【チーム未完成の社会科見学 Vol.3】「歌舞伎町ブックセンター」で、愛! wanna be with you..

パン以外のことはほとんど何も知らないチーム未完成が、人様の仕事場に訪れては、あれはなんだこれはなんだと聞いて回り、見学という名の狼藉を働く「チーム未完成の社会科見学」企画。

 

おひさしぶりの今回は、昨年10月に歌舞伎町にオープンした書店「歌舞伎町ブックセンター」さんに、セイ・ハローしてきた様子を、私、ゆりしーがレポートさせていただきます。

 

JR新宿駅東口を巻き舌気味に出て、歌舞伎町一番街を抜け、ロボットレストランを横目で見つつ、「白川郷」という趣き深いラブホテル名を味わったりしながら歩いていくと、「歌舞伎町ブックセンター」さんがばばーんと登場。

賑やかな歌舞伎町の中でもぐっと人目を引くTABOO1さんのグラフィティが目印です。

 

f:id:mikanseisei:20180628113919j:plain

 

f:id:mikanseisei:20180628113854j:plain「歌舞伎町ブックセンター」さんのエントランス。入口があまりにも開放的なので、ついつい私たちも開放的に。

 

今回お話を聞かせていただいたのは、「歌舞伎町ブックセンター」に置かれている書籍の選書を務める柳下恭平さん(あだ名付けがちな未完成は、やなしーさんと呼んでます)。

f:id:mikanseisei:20180628114301j:plain写真中央がやなしーさん。

 

めちゃラブリーにポーズを決めていただいたやなしーさんの両脇を固めているお二方は、現役のホストさん。

そもそも「歌舞伎町ブックセンター」は、歌舞伎町で数店舗のホストクラブを運営するSmappa!Group代表の手塚マキさんの発案から始まり、プロデュースに東京ピストルの草彅洋平さん、選書にやなしーさんが加わって、書店としてオープンしました。

手塚さんは、自身が経営するホストクラブのホストさんたちに、ホストを辞めたあとの人生も見据えてキャリアデザインを描いてもらううえで、その一助として本を読んでもらえたらという思いから、このお店を始めたのだそう。 

取材当日にいらしたお二方もSmappa!Groupの店舗で働いており、ホストの皆さんも常駐ではないのものの、ときに「書店員」として接客を行い、自身の出勤前後にお客さんとして訪れることもあるということなのです。

 

f:id:mikanseisei:20180713215723j:plainさすがのポージングなお二人。

 

f:id:mikanseisei:20180628114013j:plain飲食もできます。

 

f:id:mikanseisei:20180628114158j:plainトイレ入口がフォトジェニック!

 

f:id:mikanseisei:20180711163306j:plain我々もお隣失礼してきました。

 

 

f:id:mikanseisei:20180709143313j:plain

 

やなしーさんとチーム未完成の出会いは、去年大阪で開催された「KITAKAGAYA FLEA」。

颯爽と会場に現れるなり、シャンパンのボトルを開けて出展者に振る舞いまくり、軽快なステップで、ときには床に転がりながら写真を撮る、自由奔放な姿が眩しかったやなしーさん。

 

f:id:mikanseisei:20180714234215j:image
f:id:mikanseisei:20180714234209j:image

出会った日のやなしーさん。 

 

そのときには不勉強ながらやなしーさんの正体も知らず、全身から溢れ出る、パズーの親方的などんと来いバイブスだけをビシバシ感じていたのですが、やなしーさんは、書籍の校正・校閲を行う「鴎来堂(おうらいどう)」の代表で、神楽坂の書店「かもめブックス」オーナーであり、バイブスのみならず本当に親方だったのでした。

 

そんな、親方・やなしーさんが選書を担当する「歌舞伎町ブックセンター」に置かれている本は、すべて「LOVE」をテーマにセレクトされているのだそう。

ピンク、赤、黒の3色の帯がそれぞれの書籍に巻かれているのは、その色がイメージさせる「LOVE」の内容によって本が分けられているから。ひとつの色をとっても多様なイメージがあるため、ピンクは「官能的、もしくは淡い恋」、赤は「明るい愛、もしくは家族愛」、黒は「闇の愛、どす黒い愛」と、一見相反するイメージも包括されています。

もちろん「解釈は違っていい」とやなしーさんも話す通り、本の読み方は人それぞれなので、ひとつの本を巡って、「これは赤い愛では?」「いやいや、赤でもあり黒でもあるのでは」みたいなやりとりを飲みながらダラダラやったら、それぞれのパーソナルな「愛観」に踏み込んでいって、恐ろし楽しそう 。 

 

f:id:mikanseisei:20180628114048j:plainピンクの愛。 

f:id:mikanseisei:20180628114103j:plain赤い愛。 

f:id:mikanseisei:20180628114118j:plain黒い愛。 

 

そして、書棚を見渡すと、推理小説や魚河岸の写真集、自己啓発本など、必ずしもいわゆる「恋愛」を描いた本ばかりじゃないのもおもしろいところです。

 

「全部で400冊くらいあるから、バラエティがあった方がいいという理由もあるし、ひとつの本でもいろんな読み方ができるからね。だから一見、『LOVE』には結びつかないような時代小説でも、ワンシーンだけ素敵な恋愛が描かれていたら選んでいたりします。愛っていろんなものに含まれるので、結構なんでも選べるんですよね。でもこうやって本棚に並べてみると、なんだか説得力があるかも」

 

f:id:mikanseisei:20180711163413j:plain「歌舞伎町ブックセンター」では、「通常の書店と違って、話しかける接客を試してみたかった」とやなしーさんが話す通り、 赤エプロンの書店員さんは好みを聞きながら積極的におすすめしてくれます

 

ところでやなしーさん、選書のテーマが「LOVE」になった理由は? 

 

「僕がジョインする前から『LOVE』というテーマは手塚さんが考えていて。これは手塚さんの言葉だけど、歌舞伎町は『愛の迷宮』なんです。女の子が愛を探して、ホストクラブでお金を使う。そしてホストの人は稼いだお金をキャバクラで使い、そのお金はどこまで行っても回っていく。みんなが愛を探してるけど、実は誰も愛を見つけられていなくて、勝者がいない。そういう思いから愛をテーマにしようと思ったのかもしれないね」

 

本当かは知りませんが、歌舞伎町で稼がれたお金の多くは、歌舞伎町で使われるのだと、どこかで読んだことがあります。お金を媒介して、愛がぐるぐる巡って、その愛は行き場がない。

実は自身も、ボーイとして入ったホストクラブで、ある日背広を渡されて(!)ホストになったという経験を持つやなしーさん。行き場のない愛にお金を払っているのだとしたら、ホストクラブに通う女性がそこに求めているものとはなんなのでしょうか。

 

「ファンタジーなんですよ。ホストクラブでは基本的に、目の前にある情報だけで会話をするんです。だから、『彼氏いるの?』とか『どこ住んでるの?』とか、扉の外のことは話さない。そうやって現実を忘れるんだよね。人によっては、やり方が違うかもしれないけど。キャバクラとホストクラブって似ているようで構造が違っていて、キャバクラは純粋に男性の性欲で成り立っているけど、ホストクラブはそうじゃないんです」

  

f:id:mikanseisei:20180628114325j:plain

 

だいぶ話が逸れますが、私は飲食店などの「常連」になるのがたいへん苦手で、いつ行っても安定して他人扱いしてくれるチェーン店以外では転々と行く店を変え、あやうく常連になりそうな気配を感じたら、すかさず通う店を変えるという行動を繰り返してきた人間なのですが、それは普段の自分の役割を置き去りにしたくて足を運んだお店で、また新たに「常連」という役割を引き受けなければならない息苦しさを感じてしまうから。ホストクラブに通い詰めることは、常連から逃げることとは一見逆の行為のようですが、自分が背負っている役割から逃げたい瞬間は誰しもあるもので、そんな物語を扉の中だけで共有してくれるのがホストクラブなのかもしれません。

 

と、ついつい脇道に逸れて、愛の迷宮について考え始めて迷子になりそうになったところで、最後に「歌舞伎町ブックセンター」に置かれている本から、チーム未完成におすすめしたい1冊を、特別にやなしーさんが選んでくれました。

 

f:id:mikanseisei:20180628114340j:plain決断の早いやなしーさん。

f:id:mikanseisei:20180628114429j:plainじゃーん。

 

やなしーさんが選んでくれた本は、萩尾望都さんの『ローマへの道』。

 

萩尾望都さんは大家ですけど、この作品はあんまりメジャーじゃないですよね。萩尾望都さんがバレエダンサーについて書き始めた連作の初期作品なんです。『愛』という名前の主人公のバレエダンサーが、愛を学び損ねて生きていくんだけど、ラストのラストで愛を知るシーンがある。なんとなくこの4人が楽しんでくれそうだなって」

 

なんと、おすすめされる前からこの本を買って帰ろうと思っていたという、げっちゃん。

やなしーさんはとてもジェントルでハッピーな人なのですが、いつも瞳の奥で線香花火のように洞察力の火花が散っていて、その鋭さで欲しそうな本を見抜かれていたのかもしれません。やなしーさん、恐ろしい人……。

 

f:id:mikanseisei:20180710141812j:plain購入した書籍はオリジナルのブックカバーに包んでくれます。マリリン・モンロージョン・F・ケネディに送ったラブレターの言葉が。

 

ということで、今回もお付き合いいただいた、やなしーさん、「歌舞伎町ブックセンター」のみなさま、ありがとうございました!

 

f:id:mikanseisei:20180628114452j:plain

 

◆「歌舞伎町ブックセンター」さんの最新情報はこちらから!

twitter.com

 

www.facebook.com

 

取材の後にやなしーさんがInstagramでありがたいポストをしてくださいました……!

www.instagram.com

 

 (テキスト:ゆりしー、写真:ぴっかぱいせん・しをりん、Special Thanks:柳下恭平さま、「歌舞伎町ブックセンター」さま)