「小田急線偏愛紀行」の企画で妄想ストーリーを制作しました(ぶ〜〜ん)
みかんせいちゃんです!
この夏、体験シェアサービス「TABICA」と小田急電鉄による、だれかの偏愛を通して小田急線沿線を楽しむプロジェクト「小田急線偏愛紀行」の企画として、下北沢ゆかりの“ ホスト”たちが偏愛を通して下北沢の魅力を伝える、4つの体験・ツアーのうちの1つを、私たちが担当させていただきました。
私たちチーム未完成が行ったのは、「妄想×シモキタ」をテーマに、限定1名の体験者をチーム未完成がインタビュー&写真撮影し、その内容を元に体験者を主人公にした、かっこいい“妄想”ストーリーを作る……という、そんなこと言われても何が何だかですよねって感じの謎企画。
https://tabica.jp/entry/life/archives/44557
(こちらの記事で体験当日の模様がレポートされています)
そんな面妖な企画に応募してくださったハートフルなみなさんの中から選考の末、参加いただくことになったのは、群馬県在住の大学生〈ちょむ〉さん。
大学卒業後はタクシー会社にドライバーとして就職予定だという笑顔が素敵な〈ちょむ〉さんの妄想ストーリーを制作させていただきました。
(あらすじ)
トイレットペーパーは近所のドラッグストアでもっとも安いシングルロールのものを買うけれど、タクシー代だけは惜しまないタイプの佐藤貴之54歳は、今日も下北沢からタクシーに乗り込む。
今回、本当ならば妄想ストーリーを1つだけ制作する予定だったのですが、妄想がありあまってしまった結果、2つのストーリーができたため、このチーム未完成のブログで、TABICAさんのサイトに載っていないもう1つの妄想ストーリーを公開したいと思います。
ここまで、この謎の企画を一生懸命説明しようと頑張ってみたんですけど、やっぱりどんだけ説明しても謎が解けずに迷宮入りしてく感じですよね。
5秒くらいで理解できないものはスルーされちゃう昨今なのに、現時点でも謎な上に、開催前のさらに意味不明な状態で参加してくれた〈ちょむ〉さん、そして応募してくれたみなさんは本当に最高でBIG LOVE。
企画を受け入れてくれたTABICAさん、小田急電鉄さんもBIG LOVE。
ということで、〈ちょむ〉さんのインタビューを元にした「妄想ストーリー」をどうぞ。
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―(今日は、ライターになってはじめてのインタビュー! おしゃれな街での取材だから、お気に入りの黄色と黒のボーダーの Tシャツを着てきたし、頑張ろう)
あの、はじめまして、ちょむです!
―(あれ、この顔どこかで見たことある気が……)ちょむさんこんにちは! 今日はよろしくお願いします。
こちらこそよろしくお願いします。
―私はミレニアル世代のさまざまな生き方や暮らし方にフォーカスして、お話を伺っていくインタビューコンテンツを中心にしたWEBメディアでライターをしているんですけども、これから社会へ踏み出していく学生の方にもお話を伺いたいなと思っていて、ちょむさんを紹介していただいたんです。
はい。ありがとうございます。
―では早速なのですが、最初に写真の撮影からお願いしたいと思います。今日、実はカメラマンが急病で来れなくなってしまって……私が撮影もさせていただきますね。
わかりました!
―(カシャカシャ)ふう、ありがとうございました。それではここからはインタビューに移りたいと思います。まずはじめに、現在のちょむさんについて教えていただけますか。
―(群馬……)そうなんですね。ちなみに今日のインタビュー場所に下北沢を希望されたのは?
月1くらいでお洋服を買いに来るんです。下北沢駅を出た瞬間の景色が好きなんですよね。なんかわくわくするんです、賑やかだし。
―わかる気がします。私も自然豊かな場所で育ったものですから、都会は緊張します。ところでお名前は本名ではなく〈ちょむ〉さんでの掲載をご希望ということですよね?
はい。子供の頃からのあだ名なんです。
―どういう由来なんですか?
下の名前が「こうよう」というんですけど、小学生の頃、同じクラスに「こうへい君」という子がいて。二人ともあだ名が「こうちゃん」になっちゃうから、僕のあだ名を変えようということになったんです。それで友達と図書館であだ名を考えていたときにたまたま『愉快な吉四六さん』という本があったので、そこから「きっちょむ」になって、最終的に「ちょむ」だけ残りました。
―(「こうよう」……? もしかして……まさか……)あの、かわいいあだ名ですね、……大学では何の勉強をされているんですか?
地域政策学部というところにいます。両親がどちらも公務員なので、昔からずっと公務員になれと言われて育って。地元も群馬なので、とりあえず県内の国公立大学に入ることにしたんです。進学や就職のことで親に迷惑をかけたくなくて。小さい頃からあまり駄々をこねたことがないんですよね。怒ったりもしないですし。末っ子だからですかね?
―あの……もしかして、お兄さんがいたりしますか……?
はい、兄がいます。一緒に住んでるんですよ。どうしてですか?
―(やっぱり……この子……そんな……)いえ、私も兄がいたものですから、なんとなく……。ところで、ちょむさんは卒業後、タクシー会社にドライバーとして就職されるそうですね。なぜタクシーのドライバーになろうと思われたのですか?
大学に入ってから映画館でバイトをしていて。だから映画も好きですし、映画や映像関係の仕事に就くかどうかも少し迷いました。結果的に、そのバイト先で出会った一つ年上の彼女が東京でタクシー会社のドライバーとして就職していたので、僕も同じ会社に入ることにしたんです。
―彼女を追いかけて就職先を決めたということですね。素敵です。……ところで先ほど高崎にお住まいとおっしゃってましたけど……。
はい。でも子供の頃は伊勢崎というところに住んでいました。
―……伊勢崎! おうちの近くに川はありませんでしたか……?
ありました! さっきからどうしてそんなに僕のことがわかるんですか?
―いえ……。
……?
―……。
川といえば……その川にアーチ型の橋がかかっていて。子供の頃のある日、その橋の上に、お母さんとお父さんとお兄ちゃんと僕で、立っていたんです。そうしたら、突然左手の中指と薬指の間の部分を蜂に刺されて。ミツバチみたいなしょぼい蜂だったんですけど、めちゃくちゃ痛くて泣いちゃって。お父さんもお母さんも心配して、「こうよう、どうしたの」ってずっと聞いてくるんだけど、なぜか隠してたんです。なんで言わなかったのか、自分でも謎なんですけどね。
―……。
誰にも話したことがなかったんですけど……どうしてこんな話をしてしまったんでしょう……。
―……まさかここであなたに会えるなんて……。
えっ。
―実は私、あのときあなたを刺した蜂なんです。
えっ。
―正確にいうと生まれ変わりです。
えっ。
―あのとき、ミツバチの天敵であるスズメバチに兄が襲われそうになっていたんです。私たちは橋のすぐ近くまで追い詰められていたのですが、あなたたち家族が橋の上にいたことで、スズメバチは警戒して逃げていきました。私たちミツバチはほとんど人を刺すことがないのですが、あのとき興奮しきっていた私は勢い余ってあなたのことを刺してしまいました。ミツバチは人を刺すと死んでしまう生き物です。私も命を落としましたが、こうして人間に生まれ変わりました。やがて前世の記憶を取り戻した私は、いつかあなたに会って、あのとき橋の上にいてくれたお礼を伝え、なんの罪もないあなたを刺してしまったことを謝りたいと思っていたんです。
えっ。
―本当にごめんなさい。そして、ありがとう。あなたに会うという目的を達成したからには、私は再び蜂に戻らなければなりません。……短い間でしたが、ありがとうございました。さようなら。
あの……。
―ぶ〜〜ん
蜂……。
―ぶ〜〜〜ん
飛んでっちゃった……。
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こうして、我々チーム未完成は、偶然知り合った大学生・ちょむさんから、蜂が残していったレコーダーとカメラを預かり、ここに公開することにしたのであった。ぶ〜〜〜ん。
※このインタビューは(ほぼ)フィクションです。実在の人物、企業、場所とは、関係ある部分とない部分があります。
ちょむ さん(本当の)プロフィール
群馬県高崎市に住む、古着屋巡りが趣味の大学4年生。
卒業後はタクシードライバーとして就職予定。難読漢字に詳しい。
(企画:チーム未完成、文章:ゆりしー、撮影:ぴっかぱいせん)