【チーム未完成の社会科見学】ヒット連発出版社の裏側をのぞきたい
秋はいつも新型iPhoneの発表くらい急に訪れる。
めっきり涼しくなりましたね。
そんなこんなで今回は「チーム未完成の社会科見学」企画の第2弾。
九段下の出版社、朝日出版社さんにお邪魔しました。
お晩です。しをりは顔がどっか行ったので、ミツコッコーの顔を拝借している。
案内してくれたのは、編集者の綾女欣伸(あやめよしのぶ)さん。
グルーヴィジョンズさんの装丁でおなじみのアイデアインクシリーズや、TED ブックスシリーズ、武田砂鉄さんの『紋切型社会』、Chim↑Pomさんの『エリイはいつも気持ち悪い』など多数のヒット本の編集に携わり、最近は内沼晋太郎さんと韓国の書店・出版事情を取材した共著『本の未来を探す旅 ソウル』を出版したDSH(どうかしてる・凄腕・編集者)。
アイデアインクシリーズ(朝日出版社さんのWEBより)。一度は本屋さんで見たことがあるはず。
ひょんなことからお知り合いになり、綾女さんが自主的に制作した写真集『Tokyo Halloween』にぴっかぱいせんがカメラマンとして参加したり、壁とメニューがコッパーブラウンに染まった居酒屋で、チーム未完成が綾女さんを囲む会を催したりといった関係が続いていて、私たちはパンのZINEシリーズを超DIYで作っているものの、いわゆる「本」を作っている出版の現場については何も知らないので、蟻を踏み潰しちゃう小学生のような素朴な好奇心を携えて、今回乗り込ませてもらったような次第です。
1962年に創立された朝日出版社は、綾女さんが作っているような一般書はもちろん、語学関係、教科書などなどの書籍を多数出版。
そして、1991年に発売された宮沢りえさんのヌード写真集『Santa Fe』の出版元でもあり。
当時あまりにヒットしたため、社屋の半分くらいは『Santa Fe』刊行後に増築されたそう。アフター・サンタフェ(A.S.)の方が心なしか新しげ……?
さっそく最初に案内していただいたのは、在庫が置かれている倉庫。
いきなりのバックヤード!
朝日出版社の書籍は、基本的に成田市にある倉庫で在庫管理しているそうですが、急な発注などに対応する分だけ本社に置いているそう。
薄暗くて落ち着くともいえる。
ナイスDIY。矢印に制作者の遊び心を感じる。
書籍に紐をかけるマシーン、結束機。「YAMADA's TOM」のロゴマーク入り。山田のトムとは。
倉庫の扉をがらりと開けると、すぐ裏にトラックがつけられるようになっていて、スムーズに搬入出ができるソリューション的な。
暗いから写ってませんが、すぐ表が川で、氾濫したりしたら在庫がかなり危機一髪な気がします。
続いて、綾女さんが所属している第五編集部へ。
出版社だけに、お部屋には資料用の本がぎっしり&さすがのナイスセレクションな本ばかりで、DTP作業用のくそでかいMacも置いてあったり、うらやましいが詰まったお部屋。
厳密には複数人でシェアしているお部屋なのですが、こじんまりした個室感と、適度に乱雑な感じはオフィスというより、大学の研究室っぽさもあり。
綾女さんワークス(主に左下)が収められた書棚。
仕事用だけど、取材当日はYouTubeを見るために大活躍していたMac。
社内にはこんな感じで編集部が第一から第五まであり、第五編集部にはアルバイトの方を含め3名が所属していて、綾女さんがこの部屋の長的な立場だそうですが、基本的には編集部員各自が作りたい本を作るとのこと。
あんなにユニークな本をたくさん出しているのに、思いのほか少人数で作っていることにびっくり。
校正刷りを切ったりするための大事なお仕事用具(カッターマット)を完全に下敷きに。
あまりに快適な部屋に、すっかり社会科見学しにきたことを忘れて、しばし、ソウルへ訪れたばかりの綾女さんから韓国音楽事情について教えていただいたり、土産物交換(マッドなパンダのポストカード from 四川、なが餅 from 名古屋、二十世紀梨 from 鳥取、常温で放置されて発酵でパンパンに膨らんだキムチ from 韓国他)などにふけっていると、他の編集部の方が。
「チーム未完成です」とご挨拶したところ「え、なにそれ…日本語ですか?ちょっと理解が??」とだいぶ混乱のご様子で、ほんとすみませんでした。
混乱してるけどポーズは決めてくれる。
第五編集部を出まして、こちらは書庫。
過去に朝日出版社から発売された本や、参考資料となる他社の本まで、たっぷり納められてます。
きっと今や書店で買えない本もたくさんありそう。
先人の知恵がさらなる知恵を産むんだなあ。みつを。
綾女さんが入社当時(約10年前)に書庫を整理したときのふせんが現役でした。
最後にお邪魔したのは、営業部。
昭和的ハードボイルド感。
突然の闖入者にも親切な営業部の橋本さんによると、営業部は書籍を円滑に流通させるためのA to Zが主な仕事だそう。
だいぶざっくりなまとめでごめんなさい。
「先日の高松出張の際に、移動時間を短縮しようと思って、書店から書店へ走って営業したので日焼けしました」と語る、若干こんがりめの橋本さん。大量のトートバックコレクションを持っていて、営業先に合わせてその書店オリジナルのトートバックに変えていく、営業の鑑。
橋本さんのおすすめ本コーナー。斜めの陳列にこだわりを感じる。最近おすすめの書店は、そごう千葉店内にオープンした「16の小さな専門書店」、おすすめの本は石戸諭さんの『リスクと生きる、死者と生きる』(亜紀書房)、柴崎友香さんの『よそ見津々』(日本経済新聞出版社)とのこと。
書庫のふせんに続き、物を大切にする社風を垣間見る。
優しい橋本さんは「朝日出版社の本が好き」と言ったゆりしーとミツコッコーに、なんとおすすめの本(他社)までプレゼントしてくれました。読みます!
本作りは餅つきじゃないので、ライブで書籍制作のいろはを順を追って見ていくことは当然のごとく叶いませんでしたが、一通り社内を見学させていただいて思ったことは、
朝日出版社の皆さんは本当にまじで本が好き。
本を読む時って基本無言だし、音楽みたいに同じ場で共有していっせいにブチ上がる的なことはしづらいのですが、他社の本まで熱心に勧めてくれる橋本さんみたいな人に出会うと、そこにある熱量は変わらないことを改めて感じたし、最近発売されたばかりの他社の本もがんがん社内に並んでいて、きっとこの調子でいくと、みなさんお家の中も同じ様子だと推察されるのですが、そんな風に能動的に本を愛でる気持ちが、気持ちの良い本を生み出すことに繋がっているのだなとひしひしと感じたりしました。
蟻を踏み潰しちゃう好奇心を殺さないことが大事!
規模は全然違いますが、世界の楽しさの総量を増やすことに勤しむ者として、チーム未完成もより一層精進したいなと思った次第です。
綾女さんをはじめ、朝日出版社の皆様、お忙しいところありがとうございました!
そして最後にお知らせです。
綾女さんの自主プロジェクト『Tokyo Halloween』とともに、チーム未完成は12月2、3日に、韓国ソウルのBuk Seoul Museum of Artで開催される「Unlimited Edition 9」(ソウルアートブックフェア 2017)に出展します!!!
ソウルアートブックフェア には、毎年ZINEだけお預けして出していたものの、私たちが実際に海外のブックフェアに参加するのは初。めちゃくちゃ楽しみです。
その辺りでソウルにいる予定があったりする皆さんは、ぜひ観光がてら遊びに来てみては〜。
「Unlimited Edition 9」(ソウルアートブックフェア 2017)
그럼 안녕(さようなら)!
(テキスト:ゆりしー、写真:ぴっかぱいせん・しをりん、Special Thanks:朝日出版社さま)
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朝日出版社から刊行されている綾女さんの最新作はこちら。
綾女さんの自主プロジェクト。2015年、渋谷のハロウィンの狂乱をとらえた『Tokyo Halloween』はこちら。ぴっかぱいせんもカメラマンとして参加!
*チーム未完成を社会科見学させてやってもよろしいという奇特な会社の方がいたらご連絡ください。
mikanseimikansei@gmail.com